• アドバイザリーボード

第2回「アドバイザリーボード」を実施

マッチングアプリ「with」「Omiai」の運営統括を行う株式会社エニトグループ(本社:東京都渋谷区、代表取締役グループCEO:野辺 一也、以下:エニトグループ)は、2025年7月、マッチングアプリを取り巻く社会課題への対応を目的とした「アドバイザリーボード」の第2回会議を開催しました。

本ボードは、法令遵守、消費者保護、学術研究など多様な専門家とともに意見交換を行う場として2025年4月に設置され、第1回会議では「孤独の解消」や「社会インフラとしてのマッチングアプリの可能性」、それを支える信頼性の確保を主な論点として議論が行われました。
(参考資料:「アドバイザリーボード」第1回 概要

今回の第2回会議ではこうした第1回での示唆を受ける形で、「安心」と「安全」の概念整理や、とりわけ違反報告機能の在り方について集中的に議論が交わされました。また、これに加えて、今後策定予定のプリンシプルポリシーの方向性について多角的な意見交換が行われました。

以下が会議の概要と議論の主な要点です。

「アドバイザリーボード」第2回 概要

  • 日時:2025年7月11日(金)15:00~17:00 
  • 場所:都内にてオフライン会議
  • 議題: 
    • テーマ①:マッチングアプリにおける「安心」と「安全」の捉え方、および「違反報告」機能に関する設計と対応のあり方
    • テーマ②:「T&Sプリンシプルポリシー」素案に対するフィードバックと改善点の提案
  • 出席者(50音順):
    • 青島 克行 氏(弁護士 うみとそら法律事務所代表)
    • 鬼頭 美江 氏(明治学院大学 社会学部 社会学科 教授)
    • 樋口 建史 氏(第89代警視総監)
    • 山口 真一 氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授)
    • 中田 華寿子 氏(座長。株式会社エニトグループ社外取締役 / アクチュアリ株式会社代表取締役 / 内閣府 第8次消費者委員会委員)
  • ※エニトグループからの参加者
    • 野辺 一也 (株式会社エニトグループ 代表取締役グループCEO)
    • 五十嵐 昭人(株式会社with 代表取締役CEO)
    • 今井 良樹 (株式会社Omiai 代表取締役CEO)
    • 安信 竜馬 (株式会社エニトグループ Trust&Safety室長)

      議事サマリ

      本会議では、マッチングアプリにおける安心・安全の考え方や対応策、今後策定を予定しているT&Sプリンシプルポリシーの方向性について、多角的な視点から意見交換を行いました。中でも、違反報告機能の在り方については、通報への対応方針や情報の開示方法、透明性の確保など、特に重点的に議論を行いました。

      違反対応や透明性の示し方に関しては、ユーザー保護と信頼性確保のバランスが重要であるという点が改めて確認され、透明性レポートのように運用全体を伝える情報発信のあり方が論点となりました。

      また、将来的にマッチングアプリが人々の人生をより豊かにするつながりの社会インフラとしての役割を果たしていく可能性を見据え、既存の制度への対応や社会との関係性をどう構築していくかといった姿勢の重要性についても意見が交わされました。プリンシプルポリシーについては、一般的なルール集ではなく、当社らしい考え方や社会に向けたメッセージが伝わるような構成・表現へと見直していく必要があるという認識が共有されました。

      議事概要

      テーマ①:「安心」と「安全」の捉え方と「違反報告」対応について

      「安心」と「安全」の概念の整理、ならびに「違反報告」機能の在り方を中心に、運営面での課題や対応の方向性について議論した。
      特に違反報告については、以下の論点を事前に提示したうえで、参加者とともに検討を行った。

      • 「安全」は制度や技術による客観的なリスク排除を指す一方、「安心」は主観的な納得感や信頼感に関わるものと捉えられるのではないか
      • 違反報告に関する通知のあり方について、当事者への処分内容の開示がユーザーの安全や透明性にどのように影響するか
      • プラットフォーム運営における透明性の示し方として、透明性レポートのような仕組みが有効であるか
      • 今後、マッチングアプリが社会インフラとして受容されていくために、業界連携や制度の整備も視野に入れるべきか

      【アドバイザリーボードからの発言要旨】

      • 多様なユーザーへの安心感の配慮の必要性
        ユーザーの属性や経験によって「安心」と感じるポイントは異なる。たとえば、監視や規制が厳しすぎると不安を感じる人がいる一方で、対応が曖昧であると信頼性に疑問を抱かれる可能性もある。こうした多様な感じ方に対応するため、UIや言葉づかいなども含めて、心理的な安心感を意識した設計の重要性が指摘された。あわせて、マッチングアプリの存在が「社会にとって有用なインフラ」であるという認識を広く浸透させていくことが、ユーザーの安心感の醸成や世論の理解を得るうえでも有効ではないかという意見もあった。
      • 情報開示と透明性のバランス
        個別の処分内容を当事者に通知することには、二次被害や誤解といったリスクが伴う。一方で、まったく説明がない場合には、運用が恣意的であるとの印象を与える懸念もある。こうしたバランスの難しさを踏まえ、対応の透明性を高める一つの方策として、透明性レポートのような形式で、運用全体の方針や取組状況を社会に向けて示していくことが望ましいという意見が出された。
        また、社会インフラ的な役割を担う大規模プラットフォームに適用されている情報流通プラットフォーム対処法(いわゆる「情プラ法」)について、有識者より制度趣旨や運用例の紹介があり、こうした外部事例も踏まえて、自社として信頼性向上に資する仕組みを検討することも一案ではないかとの助言があった。
        そのうえで、法制度の対象であるか否かにかかわらず、社会的要請に応える姿勢を持って自主的な整備を進めていくことが、企業の透明性確保や信頼醸成につながるとの意見が共有された。
      • 当社による毅然とした対応と、業界連携の必要性
        SNS型投資・ロマンス詐欺、ぼったくり行為など、マッチングアプリを悪用した悪質な手口に対しては、単なる利用停止にとどまらず、当社から警察などの関係機関への通報や、刑事告訴・損害賠償請求といった法的措置を講じることも選択肢とすべきであるとの意見が出された。
        こうした毅然とした対応は、プラットフォームとしての責任を果たすのみならず、一般のユーザーの安心・安全を守るためにも不可欠であり、悪質な利用者とは明確に区別して対応すべきとの提言があった。あわせて、こうした重大事案への対応は一社のみで完結するものではなく、業界全体での事例共有や連携体制の整備を進めていく必要があるという提起もなされた。
        また、重大事案への対応については、個社のみで完結するのではなく、業界内での事例共有や連携体制の整備を進めていくことも、有効なアプローチの一つであるとの指摘があった。

      テーマ②:「T&Sプリンシプルポリシー」素案の検討

      2025年6月時点の「T&Sプリンシプルポリシー」素案を提示し、構成・文言・位置づけなどに関して議論した。
      本素案は、現時点では確定したものではなく、今後の方針として社内外の意見を取り入れながら検討を進める予定である。
      また、プリンシプルポリシーの目的として、安心・安全に関する考え方の対外的な明示を掲げており、今後のグループ全体の運営指針として整合性を持たせていく必要があると考えている。

      【アドバイザリーボードからの発言要旨】

      • プリンシプルポリシーの明確化
        プリンシプルポリシーを、単なる社内ルールやガイドラインとしてではなく、社会やユーザーに向けた「姿勢表明」として発信する意義があるとの意見が示された。
        そのうえで、ルールや制度の網羅性よりも、エニトグループとして特に大事にしている価値観や社会的な視点をにじませる構成が望ましいとの声があった。
        また、既存の社会課題への言及や、特にエニトグループが重視するユニークな論点(社会的孤立の解消、安心と安全のバランス、メディアとの対話的姿勢など)を打ち出すことで、他社との差別化にもつながるのではないかとの提案があった。
      • プリンシプルポリシーのメッセージ性の重要性
        現行の素案については、いわゆる「当たり前」の内容にとどまっており、読み手に対する訴求力が弱いという指摘があった。
        そのため、企業視点でのルールとしての正確さや網羅性ではなく、ユーザーや社会との接点を意識し、「なぜそう考えるのか」「どのような社会を目指すのか」といった価値判断の背景をナラティブな構成かつ「人肌感」のある表現で伝えることで、共感を醸成していくべきだとの意見が示された。
      • プリンシプルポリシーと企業ミッションの整合性
        プリンシプルポリシーの位置づけとして、現状の運営指針にとどめるか、将来的なエニトグループの方向性を示す意志表明とするかという観点が示された。
        そのうえで、プリンシプルポリシーが単なるルールではなく、企業としての姿勢や社会に向けた考え方を示すものであるとするならば、企業のミッションと内容に齟齬がないよう整合を図ることが重要であるという意見が出された。
        今後、社内でプリンシプルポリシーの方向性を検討する際には、企業として掲げる理念との一貫性にも留意すべきとの提言があった。

      本会でいただいた多角的なご意見をもとに、今後の社内での整理・検討につなげてまいります。

      アドバイザリーボードに出席いただいた有識者のプロフィールは、こちらからご覧ください。